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奥歯の詰め物がすり減ると何が起きる?レジン摩耗が招く挺出と咬合

2026年2月6日

下顎大臼歯のコンポジットレジン修復 咬合面の摩耗が確認できる口腔内写真

この記事でわかること

    • ・下顎大臼歯のコンポジットレジン(CR)修復が長期的にどのような変化を起こすのか
    • ・CRの摩耗によって上顎大臼歯に何が起きるのか(挺出のメカニズム)
    • ・挺出した歯が咬合全体にどのような悪影響を及ぼすのか
    • ・「その場しのぎ」の治療がなぜ危険なのか
    • ・下顎大臼歯の治療で本当に考慮すべきポイント

    1. この記事でわかること
    2. 下顎大臼歯のコンポジットレジン修復が招く長期リスクとは
    3. コンポジットレジン(CR)の摩耗特性と寿命
    4. 詰め物の摩耗で上顎の歯が伸びる「挺出」のメカニズム
    5. 【挺出した歯が引き起こす4つの咬合トラブル
    6. CRの追加修復では解決しない理由
    7. 下顎大臼歯の治療で重視すべき3つのポイント
    8. まとめ:奥歯の詰め物選びが咬合の将来を左右する
    9. よくある質問(Q&A)
    10. 参考文献

下顎大臼歯のコンポジットレジン修復が招く長期リスクとは
今回ご紹介する写真は、海外での生活中に「矯正治療の後戻り」や「歯周病の進行」に不安を感じ、一時帰国のタイミングで当院を受診された患者様の初診時の状態です。

ご本人は当初、左下奥歯の詰め物(CR)についてはそれほど気に留めていらっしゃいませんでした。
しかし、詳しく診査・診断を行うと、この一見「普通」に見える処置こそが、口腔内全体のバランスを崩す一因となっていたのです。

下顎の大臼歯に虫歯ができた時、コンポジットレジン(CR)で修復するという選択は、一見すると合理的に思えます。歯を削る量が少なく、その日のうちに治療が完了し、見た目も自然。患者さんにとっても歯科医師にとっても、手軽で受け入れやすい治療法です。

しかし、私はこの「手軽さ」にこそ、大きな落とし穴があると考えています。

下顎大臼歯へのCR修復は、短期的には問題なく機能するかもしれません。しかし長期的な視点で見ると、それは「咬合崩壊」への第一歩になりかねないのです。

今回は、なぜ下顎大臼歯へのCRが問題となりうるのか、そのメカニズムを「摩耗」と「挺出」という2つのキーワードから解説します。

コンポジットレジン(CR)の摩耗特性と寿命

まず理解していただきたいのは、コンポジットレジンは経年的に摩耗していく材料だということです。

これは材料の欠点というよりも、特性として認識すべき事実です。
現在主流となっているコンポジットレジンの摩耗機構や耐摩耗性については多くの研究で検証されており、フィラーの種類や含有量、マトリックスの組成によって摩耗の程度は異なるものの、「摩耗そのものを完全に防ぐことはできず、年間数マイクロメートル(μm)単位での変化が蓄積されます。」

 

ここで重要なのは、コンポジットレジンは製品によって劣化のペースに大きな差があるということです。

高品質な製品と安価な製品では、数年後の摩耗量や物性の低下に明らかな違いが生じます。

同じ「CR修復」でも、使用する材料によって予後は大きく変わるのです。

 

また、患者さんにぜひ知っておいていただきたいのが「ハイブリッドセラミック」と呼ばれる材料についてです。

この名称から「セラミックの一種」と思われがちですが、実態はセラミック粒子を混ぜたレジン(樹脂)です。

本来のセラミック(陶材)とは物性が大きく異なり、摩耗や劣化の傾向はコンポジットレジンに近いものがあります。

 

「セラミック」という名称に惑わされず、材料の本質を理解した上で選択することが大切です。

 

特に注目すべきは、咬耗(歯ぎしりや食いしばりによる摩耗)傾向のある患者さんにおける長期的な変化です。

咬耗患者の直接コンポジット修復を5年間追跡した研究では、修復物の高さが経時的に失われていくことが確認されています。

つまり、治療直後に適切な咬合高径で仕上げたとしても、その高さは永続的に維持されるわけではないのです。

詰め物の摩耗で上顎の歯が伸びる「挺出」のメカニズム

では、下顎大臼歯のCRが摩耗して高さを失うと、口腔内ではどのような変化が起きるのでしょうか。

ここで重要になるのが「挺出(ていしゅつ)」という現象です。

 

挺出とは、対合歯(噛み合う相手の歯)を失った歯が、その空間を埋めるように伸びてくる現象のことです。

歯は顎の骨に埋まって固定されているように見えますが、実際には生涯を通じて移動する能力を持っています。

 

無対合歯の挺出に関する研究では、驚くべきデータが報告されています。

対合歯を失った歯の92%に挺出が認められ、その挺出量は平均1.68mm、最大で約4mmに達したというのです。

さらに、上顎の歯は下顎の歯よりも挺出しやすく、無対合の期間が長いほど挺出量が増加することも明らかになっています。

 

下顎大臼歯のCRが摩耗して高さが下がるということは、上顎大臼歯にとって「対合歯の高さが足りない」状態、

つまり部分的な無対合状態に近づくことを意味します。すると上顎大臼歯は、失われた接触を求めて徐々に挺出を始めるのです。

挺出した歯が引き起こす4つの咬合トラブル

上顎大臼歯の挺出は、単にその歯が伸びてくるだけの問題ではありません。

挺出した歯は、口腔内全体の調和を乱す原因となります。

挺出により引き起こされる問題として、以下のものが挙げられます。

 

第一に、咬合平面の乱れです。本来、歯列は滑らかなカーブを描いて並んでいます。

しかし一部の歯が挺出すると、このカーブが崩れ、でこぼこした咬合平面になってしまいます。

 

第二に、咬合干渉の発生です。挺出した歯は、顎を動かした時に本来当たるべきでない位置で接触を起こします。

この異常な接触点が、顎の動きを妨げたり、特定の歯に過剰な力をかけたりする原因となります。

 

第三に、残存歯へのオーバーロードです。咬合干渉により、一部の歯に咬合力が集中すると、その歯の破折や動揺、さらには歯周組織の破壊につながる可能性があります。

第四に、顎関節への影響です。

咬合の乱れは、顎関節にも負担をかけます。

顎関節症の発症や悪化のリスク因子となりうるのです。

このように、下顎大臼歯のCR摩耗という一見小さな変化が、上顎大臼歯の挺出を介して、口腔内全体の咬合崩壊へと連鎖していく可能性があるのです。

CRの追加修復では解決しない理由

「それなら、CRが摩耗したらまた足せばいいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし問題はそう単純ではありません。

咬合高径(上下の歯が噛み合った時の顎の高さ)の管理は、口腔内全体のバランスの中で考えるべきものです。

下顎大臼歯だけにCRで高さを足すという対処は、あくまで局所的な応急処置に過ぎません。

 

咬合高径の回復や増加に関する研究では、「高さを回復させるなら片顎や局所ではなく、歯列全体で行うべきである」という設計思想が強調されています。

一部の歯だけで咬合高径を支えようとすると、その歯に過剰な負担がかかり、再び摩耗や破折を起こすリスクが高まるからです。

また、すでに挺出してしまった上顎大臼歯を元の位置に戻すことは容易ではありません。場合によっては矯正治療や外科的処置が必要になることもあります。

下顎大臼歯の治療で重視すべき3つのポイント

では、下顎大臼歯の治療においてはどのような選択が望ましいのでしょうか。

私が重要だと考えるのは、以下の点です。

まず、治療前の包括的な診査です。

その歯だけを見るのではなく、対合歯の状態、咬合平面、咬合高径、咬耗や歯ぎしりの有無、顎関節の状態など、口腔内全体を評価することが不可欠です。

次に、長期予後を見据えた材料選択です。CRが悪い材料だと言いたいわけではありません。しかし、下顎大臼歯という咬合力が最も強くかかる部位においては、より耐摩耗性の高い材料(セラミックや金属など)を検討する価値があります。

そして、必要に応じた全顎的なアプローチです。

すでに咬合高径の低下や咬合平面の乱れが生じている場合は、1本の歯の治療だけで解決しようとせず、上下の歯列全体を視野に入れた治療計画を立てることが重要です。

まとめ

下顎大臼歯へのCR修復は、決して「間違った治療」ではありません。

適応症を見極め、適切な管理を行えば、十分に機能する治療法です。

しかし、その手軽さゆえに「とりあえずの選択」になりやすいことも事実です。

そして、その「とりあえず」が、数年後の咬合崩壊の引き金になる可能性があることを、私たち歯科医師は認識しておく必要があります。

大切なのは、目の前の1本の歯だけでなく、口腔内全体の調和と長期的な安定を見据えた治療設計です。

「その場しのぎ」ではなく「将来を見据えた設計」を。

それが、患者さんの歯と咬合を守るために、私たちができる最も重要なことだと考えています。

海外から一時帰国での治療をご検討の方へ

今回の症例のように、海外在住の方が日本への一時帰国時に精密なリカバリー治療を希望されるケースが増えています。

しかし、自由診療による精密治療は、その場しのぎの処置とは異なり、事前の緻密な設計と十分な診療時間の確保が不可欠です。

滞在期間中に最大限の結果を出すため、当院では以下の体制を整えています。

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  • オンライン診療による事前相談: 日本へ出発される前に、オンライン診療を通じてお悩みをお伺いすることが可能です。現在の症状や、可能であれば現地での資料を事前に共有いただくことで、帰国後スムーズに精密診査・治療へと移行できます。

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デンタルサロンナチュール銀座は、お一人おひとりに十分な時間を確保するため、完全予約制となっております。
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よくあるご質問(Q&A)

Q. 下顎大臼歯にCRを入れるのは絶対にダメなのですか?

A. 絶対にダメというわけではありません。小さな虫歯の修復や、咬耗傾向がなく咬合力が比較的弱い方であれば、CRは十分に有効な選択肢です。重要なのは、患者さん一人ひとりの口腔内の状態やリスク因子を評価した上で、適切な材料を選択することです。

Q. すでに下顎大臼歯にCRが入っています。すぐにやり直すべきですか?

A. ご自身での判断は難しいというのが正直なところです。

そもそも、そのCRを入れた歯科医師が「問題ない」と判断したからこそ、その治療が行われています。

同じ先生に診てもらっても、問題があっても「大丈夫です」と言われる可能性があります。

また、CRの摩耗は天然歯より早いペースで進行し、それと同時に上顎大臼歯の挺出も起きています。

1日2日で変化するわけではありませんが、数年単位で確実に進行していきます。

実際、入れ歯の人工歯がすり減った際にCRで修復することがありますし、咬合高径が低下したケースで咬合挙上を行う際にもCRを使用することがあります。

しかしこれらの場合でも、CRにはファセット(摩耗面)がつきます。

ご自身では変化に気づきにくいため、ご心配であれば咬合や補綴を専門的に診ることができる歯科医院でセカンドオピニオンを受けることをお勧めします。

Q. CRの代わりにどのような材料が推奨されますか?

A. 下顎大臼歯のように強い咬合力がかかる部位では、セラミック(e.max、ジルコニアなど)や金属(ゴールドなど)といった耐摩耗性の高い材料が選択肢になります。ただし注意が必要なのは「ハイブリッドセラミック」です。

名称に「セラミック」とありますが、実態はセラミック粒子を混ぜたレジンであり、本来のセラミックとは異なります。

安価な選択肢として提案されることがありますが、摩耗や劣化の傾向はCRに近いため、下顎大臼歯には推奨しにくい材料です。

Q. 挺出してしまった上顎大臼歯は元に戻せますか?

A. 挺出の程度によります。

軽度であれば咬合調整で対応できることもありますが、中等度以上の挺出では矯正治療による圧下(歯を骨の中に押し戻す処置)が必要になることがあります。

挺出が進行すると治療の難易度と費用が上がるため、早期発見・早期対応が重要です。

Q. 咬耗(歯ぎしり・食いしばり)がある場合、どうすればよいですか?

A. 咬耗傾向がある方は、修復物の摩耗リスクが高くなります。

まずは夜間のナイトガード(マウスピース)の使用を検討し、修復材料も耐摩耗性を重視して選択することが大切です。

また、咬耗の原因(ストレス、睡眠時無呼吸など)へのアプローチも重要です。

Q. 咬合崩壊を防ぐために日常生活で気をつけることはありますか?

A. 定期的な歯科検診を受け、咬合の変化を早期に発見することが最も重要です。

また、硬いものを片側だけで噛む癖や、歯ぎしり・食いしばりの自覚がある場合は、早めに歯科医師に相談してください。

 

Q.海外から一時帰国しての治療は可能ですか?

A. はい、可能です。ただし、当院は一人ひとりの患者様に十分な時間をかける完全予約制をとっております。

そのため、帰国直前のご連絡ですとご希望に沿えない場合がございます。

オンライン診療を活用し、入国前にあらかじめ治療の方向性と日程調整を行う「事前準備」を強く推奨しております。

 


参考文献

1. Dionysopoulos D, et al. Wear of contemporary dental composite resin restorations: a literature review. Restor Dent Endod. 2021;46(2):e18.

2. Ning K, et al. Wear behaviour of direct composite restorations in tooth wear patients after 5 years. J Dent. 2022;127:104325.

3. Pizzolotto L, et al. Resin Composites in Posterior Teeth: Clinical Performance and Direct Restorative Techniques. Polymers. 2022;14(23):5138.

4. Craddock HL, et al. Occlusal changes following posterior tooth loss in adults. Part 1: a study of clinical parameters associated with the extent and type of supraeruption in unopposed posterior teeth. J Prosthodont. 2007;16(6):485-494.

5. Kiliaridis S, et al. Supereruption of teeth and treatment options. Management of Complications in Oral and Maxillofacial Surgery (review).

6. Khan MS, et al. Assessment of supraeruption of teeth opposing edentulous spaces. Pak J Health Sci. 2022;3(4):127-131.

7. Yadfout A, et al. Increasing Vertical Dimension of Occlusion: A Narrative Review. Dent J (Basel). 2024;12(5):138.

8. Goyal MK, et al. Re-establishment of the occlusal vertical dimension: a case report. J Dent Health Oral Disord Ther. 2018;9(2):111-114.

デンタルサロン ナチュール銀座 院長 日髙 暁子

この記事の執筆者

デンタルサロン ナチュール銀座

院長:日髙 暁子(歯科医師)

なぜ歯を治してもまた悪くなるのか?その疑問を追求した結果、全身の健康に辿り着きました。噛み合わせだけでなく、あなたの10年後の健康を一緒に考えます。

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