2026年2月1日

「毎日丁寧に歯を磨いているのに、なぜか歯が欠ける」
「根管治療(神経の治療)をした歯が、数年でダメになってしまった」
「以前より歯が短くなったり、先端がギザギザしたりしている」
こうしたトラブルを繰り返す背景には、実は「細菌」以外の、もっと根本的な「物理的な破壊の連鎖」が隠れていることがあります。その大きな要因の一つが、意外にも「肥満(体重増加)」です。
今回は、なぜ「太ること」が「歯を失うこと」に直結するのか。その驚きのメカニズムを、医学的根拠に基づき丁寧に紐解いていきます。
体重が増えるとき、脂肪は目に見えるお腹周りだけにつくわけではありません。実は「体の内部」のスペースを奪っていきます。
口腔・頸部のスペース不足:大きくなりすぎた舌や、首周りの内部についた脂肪は、鼻腔や気道を物理的に圧迫し、お口の中の空間(口腔容積)を狭くします。肥満者では咽頭周囲の脂肪沈着により上気道の虚脱性が増大することが報告されています。
横隔膜の圧迫:腹部の脂肪は横隔膜を押し上げ、肺が広がるのを邪魔します。特に仰向けで寝る際、重力によってこれらの軟組織が喉の奥へ落ち込みます。
すると鼻での呼吸が困難になり、狭くなった隙間を空気が通る際に軟組織が振動して、「いびき」が発生します。これは、体が窒息の危機を感じているサインなのです。
「酸素を取り込む」という生命維持の最優先事項を果たすため、体は姿勢を劇的に変化させて呼吸路を確保しようとします。
骨盤の前傾と反り腰:お腹の重みを支えるために骨盤が前傾し、バランスを取るために背中が反り返ります。
頭位前方化(ストレートネック):気道を広げるため、立っている時は顎を突き出し、首(頸部)を湾曲させる姿勢が定着します。
咬合、姿勢、顎関節症の間には相互関連があることが複数の研究で示唆されています。この姿勢の崩れは、ダイレクトに「顎の位置(下顎位)」に影響を与えます。不安定な顎の位置で、呼吸の苦しさからくる「食いしばり(クレンチ傾向)」が加わると、特定の歯に過剰な負荷(オーバーロード)が集中し始めます。
研究によると、天然歯列における臼歯部の最大咬合力は男性で約350〜520N(約35〜53kgf)、女性で約220〜440N(約22〜45kgf)に達することが報告されています。食いしばりや歯ぎしりがある場合、この力が長時間にわたり特定の歯に集中することになります。
本来、私たちの歯には噛む衝撃を逃がす「緩衝システム」が備わっています。しかし、長年のオーバーロードはこのシステムさえも変質させてしまいます。
① クッション(歯根膜)の機能不全
歯と骨の間にある「歯根膜(しこんまく)」は、本来しなやかなクッションです。しかし過剰な力で圧迫され続けると、血流が滞り(鬱血・虚血)、代謝が停滞。クッションは柔軟性を失い、硬くなってしまいます。
② 骨のしなやかさ(靭性)の喪失
歯を支える骨も、過重な負担に対抗しようとして密度が増し、硬く変化します。しかし、これは「丈夫な骨」ではなく、「たわむことができない、脆くて硬い骨」です。
「逃げ場のない力」が「硬い骨」と「硬いクッション」に挟まれた「歯」を直撃する——これが、歯が物理的に破壊される正体です。
破折(パカッと割れること)に至る前段階として、お口の中や全身には必ずサインが現れます。

体型と呼吸のサイン
□ 数年前と比べて体重が増加傾向にある
□ 舌の縁にギザギザの歯型がついている
□ 家族にいびきを指摘される、または自分のいびきで目が覚める
□ 鏡を見ると、顎を前に突き出したような姿勢(猫背)になっている
■ お口の中の「破壊」の予兆
□ 以前より歯の丈が短くなった気がする(前歯が小さくなった)
□ 歯の先端がギザギザしていたり、表面がザラついたりする
□ 詰め物や被せ物が、数年おきに何度も外れる
□ マウスピースがすぐに穴が開いたり、壊れたりした
□ 神経の治療(根管治療)をした歯が、最終的に割れて抜歯になった経験がある
※複数当てはまる方は、物理的なオーバーロードによって歯の寿命が削られている可能性があります。気になる方は一度歯科医師にご相談ください。
「根管治療をしたから歯が弱くなった」とよく言われますが、現実はもう少し複雑です。
根管治療後の歯における垂直性歯根破折(VRF)のリスク因子を調べた研究では、高齢、根管の過剰充填、歯根に対する根管腔の比率が大きいことなどがリスク因子として報告されています。つまり、治療そのものが原因というよりも、もともとの歯の状態や継続的な負荷の蓄積が関係していると考えられます。
デンタルサロンナチュール銀座では、以下のように考えています:
もともとオーバーロードや微細なヒビ(クラック)があった歯が、治療によって構造的に少し弱くなったタイミングで、以前と変わらない(あるいは増大した)負荷を受け続ける。その結果、ある日ついに限界を超えて割れてしまうのです。
歯が短くなったりギザギザになったりするのも、その前兆です。歯が削れると噛み合わせが低くなり、それがさらに気道を狭くして呼吸を苦しくするという「負のスパイラル」を招くことがあります。
歯が割れたとき、その歯を治すことは重要です。しかし、「なぜ割れたのか?」という背景にある「呼吸・姿勢・体重」という根本的な物理的ストレスに目を向けなければ、本当の解決には至りません。
デンタルサロンナチュール銀座では、お口の中のトラブルを「全身からのサイン」として捉えています。歯を守ることは、呼吸と姿勢を整え、全身のバランスを取り戻すこと。
「最近いびきが気になる」「歯が短くなってきた」という方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、あなたの歯と全身の健康を守るためのパートナーでありたいと考えています。
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※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず歯科医師にご相談ください。

デンタルサロン ナチュール銀座
院長:日髙 暁子(歯科医師)
なぜ歯を治してもまた悪くなるのか?その疑問を追求した結果、全身の健康に辿り着きました。噛み合わせだけでなく、あなたの10年後の健康を一緒に考えます。
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