「砂糖と虫歯」世界で25億人が抱える予防可能な病気
1. 虫歯は世界最多の非感染性疾患
虫歯(う蝕)は、世界中で最も一般的な非感染性疾患であり、25億人もの人々が永久歯の虫歯に悩まされています。
さらに、5億1000万人の子どもたちが乳歯の虫歯を抱えています。
驚くべきことに、虫歯は予防可能な疾患であるにもかかわらず、多くの国で深刻な健康負担となっており、痛み、不快感、食事や睡眠の困難、歯の喪失、そして生活の質の低下を引き起こしています。
2. 遊離糖類が虫歯の最大のリスク要因
食品や飲料に含まれる遊離糖類の摂取は、虫歯の最も一般的なリスク要因です。
遊離糖類とは?
- 製造業者、調理者、消費者が食品や飲料に添加したすべての単糖類・二糖類
- ハチミツ、シロップ、果汁、濃縮果汁に天然に含まれる糖類
WHOの推奨:砂糖摂取の制限
WHOは明確なガイドラインを示しています:遊離糖類の摂取を総エネルギー摂取量の10%未満に制限し、理想的には5%未満にすることで、生涯にわたって虫歯のリスクを最小化できます。
- 10%未満:成人の場合、1日約50g(ティースプーン10杯分)
- 5%未満:成人の場合、1日約25g(ティースプーン5杯分)
また、WHOは2歳未満の子どもには砂糖入り飲料を一切与えないことを推奨しています。
3. 見落とされがちな糖分の摂取源:タバコの深刻な影響
タバコに含まれるシロップと加熱による変化
- 蒸気による組織への浸透 タバコは燃焼・加熱により蒸気になり、この蒸気は歯肉溝や粘膜組織に深く染み込みます。通常の食品とは異なり、蒸気状態のため口腔内の隅々まで到達します。
- 加熱された糖質のタール化 タバコに含まれるシロップ(糖質)は加熱されるとタール状の物質に変化し、高い粘着性をもって歯面にこびりつき、通常の歯磨きでは除去が困難です。
- 病原菌の巣の形成 粘着性のあるタール状物質はプラーク内の細菌にとって理想的な生息環境となり、虫歯菌や歯周病菌の巣を形成します。
- 複合的な悪影響 口腔内の血流悪化、唾液分泌低下、自浄作用の低下、免疫機能低下などが重なり、罹患リスクが著しく上昇します。
4. 野生動物とペット動物から学ぶ口腔健康の真実
なぜ野生動物に虫歯がないのか?
- 加工された糖分を摂取しない: 人工的に添加された糖分を摂らない。自然の糖は遊離糖類とは異なります。
- よく噛む食べ物を食べている: 硬い食物の咀嚼で自浄が働き、唾液分泌も促進されます。
- ダラダラ食べをしない: 食事にメリハリがあり、酸性時間が限定的です。
ペット動物に虫歯や歯周病が見られる理由
- 加工ペットフードの摂取: 糖分や炭水化物が添加され、柔らかいフードは咀嚼が少なく自然清掃が働きにくい。
- 人の食べ物を与えられる: おやつ・テーブルフードに糖分が含まれ、間食習慣がつく。
- 野生と異なる食生活リズム: 定期給餌により食事リズムが変化。
現代人の食生活との共通点
ペットと現代人の口腔疾患増加の背景には、遊離糖類や加工食品の摂取が共通します。フッ素や歯磨きは重要ですが、根本要因である糖分摂取の見直しが本質的な予防策です。
5. 虫歯はどのように発生するのか
虫歯のリスクを高める3つの要因
- 継続的な遊離糖類の高摂取
- フッ素への不十分な曝露
- 適切なタイミングと適切な方法での歯磨きが不足している状態
3要因が揃うとリスクは一気に上昇します。最重要は遊離糖類の制限と口内清掃で、フッ素は補助的手段といえます。
6. 虫歯がもたらす深刻な影響
身体的症状
- 痛み・不快感
- 慢性的な全身感染
機能的制限
- 食事・会話・呼吸・睡眠の困難
精神的・社会的影響
- 感情面・精神面・社会生活への悪影響
- 子ども:学校欠席/大人:欠勤・就職機会の減少・生産性低下
経済的負担
- 口腔疾患の直接支出総額:3,870億米ドル(2019年、WHO加盟194カ国)
- 世界平均で1人当たり約50米ドル/世界の直接医療支出の約4.8%
- 生産性損失:世界全体で約3,230億米ドル
7. 効果的な予防策:WHOの推奨アプローチ
1. 集団レベルの介入
- 栄養表示: 前面表示や解釈しやすい表示で糖分量を明示、包装食品の義務表示
- 製品改良: 食品・飲料の糖分に上限・目標設定、タバコへのシロップ添加規制
- 公共調達政策: 学校・病院・職場で高糖分食品の提供削減
- 子どもの保護: 高糖分食品のマーケティング規制
- 税制措置: 砂糖入り飲料・高糖分食品への課税
- 禁煙支援: 喫煙の多重リスクと、加熱糖質のタール化による病原菌の巣形成の啓発
2. 個人レベルの介入
- フッ素の局所塗布、シンプルな修復技術、プライマリケアでの早期治療
8. デンタルサロンナチュール銀座での取り組み
私たちができること
- 口腔環境の詳細検査/食習慣の個別カウンセリング
- 遊離糖類を減らす具体アドバイス
- 喫煙者への禁煙支援と専門ケア(タール状物質の除去を含む)
- フッ素塗布などの予防処置、早期発見・早期治療による最小侵襲治療
9. まとめ:予防は治療に勝る
虫歯予防のポイント
- 遊離糖類の摂取を制限(総エネルギーの10%未満、理想は5%未満)
- 2歳未満の子どもには砂糖入り飲料を与えない
- 禁煙(加熱糖質のタール化は病原菌の巣を形成しやすい)
- 加工食品を減らし、自然な食材を選ぶ/よく噛める食材を選ぶ
- ダラダラ食べをしない(食事にメリハリ)
- 再石灰化を促すハイドロキシアパタイトまたはフッ素入り歯磨き粉で適切に歯磨き
ただし、フッ素は使用上に注意が必要です。 - 定期検診で早期発見・早期治療
野生動物が虫歯にならず、ペット動物に虫歯が見られる事実は、口腔疾患が食生活の変化に起因する現代病であることを示唆します。
とくに喫煙は、糖質のタール化と口腔組織への浸透という二重のリスクを伴います。
フッ素や歯磨きも重要ですが、まずは食生活の改善と禁煙が最も根本的な予防策です。
デンタルサロンナチュール銀座では、WHO推奨の予防アプローチに基づいた口腔検査とカウンセリングを行っています。
ご自身とご家族の口腔健康を守るため、まずは現在の状態を正しく把握することから始めましょう。
検査・カウンセリング予約は
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参考資料:WHO Fact Sheet “Sugars and dental caries”(2025年8月更新)






