
2025年7月10日
「口臭も、炎症も、“守られている口内”とは|定期メンテナンスで気づけた小さな異変」
① 導入:定期メンテナンスに通う意味
「定期的にメンテナンスを受けているから大丈夫」
そう思っていたのに、ふとした変化に驚かされることがあります。
デンタルサロンナチュール銀座では、定期メンテナンスを継続されている患者さまがいらっしゃいます。
口臭や歯周病、着色といったトラブルは、定期通院していれば大丈夫と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。
どれだけメンテナンスに通っていても、生活環境の変化や体調不良、セルフケアの“わずかなずれ”によって、口内環境は敏感に反応します。
今回、Sさんの口腔内で見られた「異変」はまさにその一例でした。
② Sさんのケース紹介
Sさんは、歯のホワイトニング、歯列矯正治療、歯のセラミック治療が終了した後も、2ヶ月ごとの定期メンテナンスを欠かさず継続されている、42歳の女性です。
これまで安定した状態を維持していたものの、今回の来院時、いつもとは異なる様子が見られました。
特に目立っていたのは、前歯の上顎側切歯(2番)に広がる、グレーがかった茶色い着色。
これまでに見られなかった汚れの付着状態でした。
「先生、マテ茶の飲み過ぎで歯が茶色くなっちゃいました」
視診では「歯ブラシで取れそうなタイプ」と判断できました。
「これは、マテ茶のせいではなく磨き残しが主な原因でしょう」
実際にその場で歯ブラシを用いて私が除去し、その様子を鏡越しにSさんにも確認していただきました。
また、フロスの使い方の復習も行いました。結果、ワンタフトブラシとデンタルフロスで8割の着色が落ちてしまいました。
かなり頑固な着色でしたが、適切なブラシ圧をしっかりとかければ歯茎を傷めることなくほぼ除去できることを、その場で実感いただけたと思います。磨き癖や、勘違いのパターンは個人差が大きいのです。
同じ口内清掃の道具をご案内しても使い方が異なっていると同じ結果に結びつかないものです。
加えて、辺縁歯肉に軽度の炎症が見られ、明らかに普段とは異なる口内環境でした。
唾液検査では白血球数と虫歯菌の数値がやや高めに出ており、辺縁歯肉の炎症と一致する結果が得られました。
一方で、位相差顕微鏡で観察した細菌には、以前は無数に存在していた螺旋状菌やカビはあまり認められず、著しい菌叢の荒れは認めせんでした。
舌苔も多くなく、口臭はむしろ抑えられていた印象です。歯垢の上にマテ茶の着色が染め出し液のように存在していました。
(まるで天然の染め出し液のようですね。)
あまりに変化が大きかったため、「何か環境の変化がありましたか?」とお聞きしたところ、思いがけないエピソードが語られました。
実は1ヶ月ほど前、お友達と居酒屋で飲んでいた際に階段から転倒し、そのまま意識を失って救急搬送されたとのこと。打撲による出血がひどく、病院で目を覚ましたときには輸血を受けていたそうです。幸い骨折はなく、現在は退院されていますが、そのときに当院の予約をキャンセルされていたことが後になって分かりました。
「前歯がこんなになってしまって……本当はすぐにクリーニングに来たかったんです」
と話してくださったSさん。これまでご自身が大切にされてきた口腔環境への意識が、言葉の端々に表れていました。
③見逃せない“ちょっとした変化”
定期的なメンテナンスを受けていても、環境の変化や生活リズムの乱れによって、セルフケアの質は微妙に揺らぎます。
今回のSさんも、歯ブラシ圧の不足が見受けられ、歯面に磨き残しが蓄積した結果、着色と炎症が起きていたと考えられます。
特に印象的だったのは、「圧が弱すぎること」が原因だった点です。
私たち歯科医療者は、患者さんに対して「歯ブラシ圧を強くしすぎないように」と注意する場面は多くありますが、
「もう少ししっかり圧をかけて磨いてください」と伝えきることは、実は少ないのではないでしょうか?
しかし実際には、圧が弱すぎることで汚れを十分に除去できず、表面にバイオフィルムや着色が残ってしまうケースもあります。
圧をしっかり欠けても歯茎や歯に傷がつかない。
デンタルサロンナチュール銀座では、安心してしっかりと使っていただける歯ブラシのみを厳選してご案内しています。
今回のように、しっかりと歯ブラシで磨いたときに汚れが落ちることを、鏡越しに一緒に確認する体験は、患者さん自身がセルフケアを見直す大きなきっかけになります。
Sさんの場合、歯の形態や欠損、矯正歴、補綴物など、さまざまな要因が絡み合っているため、定期的な評価と個別指導が必要不可欠です。
④ セルフケアと専門ケアの連携
今回のSさんのケースでは、普段とは異なる汚れの付着と軽度の歯肉炎が見られましたが、大きな崩壊には至っていませんでした。
これは、これまでに当院で行ってきた歯周病の「初期治療」・「PCR検査」・「投薬治療」・「矯正後の補綴処置」・「メンテナンス」といった一連の管理が、しっかりと機能していた証拠だといえます。
歯の表面は一時的に汚れていても、舌苔の沈着や強い口臭がなかったことからも、口腔内のバランスがまだ“守られている状態”であることがわかります。
ただし、セルフケアには微妙な“質の揺れ”が現れていました。
特に今回は、歯ブラシの圧力が弱すぎることが、着色と磨き残しの原因となっていました。
歯科医療の現場では「圧をかけすぎないように」と指導することはあっても、「もっとしっかり圧をかけて磨いてください」と伝える機会は意外と少ないものです。しかし、実際には“弱すぎる”ことで汚れを落とせていない方も多くいらっしゃいます。
Sさんにもワンタフトブラシやフロスの使い方を改めて見直していただきながら、「どれだけの圧で磨けば汚れが落ちるのか」を、その場で体感していただきました。このように、専門ケアとセルフケアの橋渡しをすることが、予防歯科の大きな役割でもあります。
⑤ 他院との違い・継続の価値
Sさんは、もともと歯科に対して苦手意識が強く、子どもの頃以来ほとんど通院されていなかったそうです。
当院との出会いは、TV番組の撮影でモデルとして来院されたことがきっかけでした。
その後、治療とメンテナンスを重ね、今では口内環境の安定に努められています。
今回、別番組の撮影で他院を訪れる機会があり、その時の体験についてこう語ってくれました。
「診察の受け答えも当たり障りのない内容ばかりで、どこか一方通行に感じました。
それ以上に気になったのは、担当の先生がマスカラでまつ毛がバサバサ、ネイルも長く派手で、
正直、“ここで医療を受けたい”という気持ちにはなりませんでしたね。」
これは、技術的な話以上に、患者さまが医療に求める信頼感・清潔感・丁寧さを象徴するエピソードでした。
ですが、実際には技術的な面にも大きく影響する話でもあります。
当医院では微生物を観察するための『位相差顕微鏡』以外に『歯科用顕微鏡』を使用します。
その際、自まつ毛でさえも接眼レンズを覗く際に邪魔に感じます。
上記の理由で、私は勤務中のメイクにマスカラを使用していません。
(見た目を美しくするためにはマスカラなどで目ヂカラをUPした方が良いと思います。)
また、歯科大学で学ぶことの一つとして『フィンガーレスト』とういう基本手技があります。
(興味がある方は、歯科、フィンガーレストと検索してみてくださいね)
繊細な仕事を高回転かつ高トルクのハンドピースを使ったり、超音波で振動する繊細な器具を小さな歯と歯石の境界面にあてがう際に、固定源を作ってブレないようにするのですが、爪が長いと患者さんの顔や歯茎を傷つけるので私は爪を短く切っています。
この仕事、歯科に限らず医療職に就くと決めてからは、爪を伸ばそうと考えたことはありません。
ちなみに学生の頃から爪は一度も伸ばしていません。
長い自爪や装飾ネイルは仕事の邪魔になります。
加齢とともに割れやすくなった爪を補強する目的のネイルは必要だと思います。
補強目的の場合、割れたり折れたりしやすくなるので爪を長くはしないですよね。
当院では、『視診』・『触診』・『臭診』・『聴診』・『打診』といった五感を用いた基本診査に加え、
各種顕微鏡や唾液検査、歯周病原因菌PCR検査などの客観的指標を用いて、根拠ある診断と予防計画を立てています。
“何がどれだけ悪くなりそうか”
を見える形でお伝えすることを大切にしています。
また、保険診療では時間や処置範囲に制限があるため、どうしても表面的なケアにとどまりがちです。
特に歯肉縁下のケアは高価な極細超音波チップと、微細な振動のモード設定が必須となります。これは安価な歯科ユニットでは装備できません。
保険診療メインのクリニックでは多面的に同等のフォローは困難だと思います。
目で見てわかる大きな違いは、同じ時間帯に複数名の予約を取ることがないという点です。
自由診療だからこそ可能な深い介入と、患者一人ひとりに向き合う丁寧な対応が、治療効果だけでなく、患者さまの安心感にもつながっています。
Sさんのように、先天欠如や歯列不正、歯周病リスクが重なっている方にとっては、「どこで、どんな姿勢で」ケアを受けるかが将来の歯の保存に直結します。当院の背術以上にご本人の協力的かつ前向きな姿勢が最も重要であるということです。
一時的にメンテナンスの間隔を3ヶ月に延ばしたところ、状態の揺らぎが見られたため、現在は2ヶ月ごとの通院でコントロールできています。
これは「通うほどに良くなる」ことを体感していただいている証でもあり、今後のステップアップへつなげていくための重要な土台です。
⑥ まとめ
今回のSさんのように、もともと歯周病リスクが高く、口臭の原因菌も多く確認されていた方でも、適切な治療と定期的なメンテナンスによって、口内環境を安定させていくことができます。しかしそれはご本人の前向きな継続があってこそなし得るものでもあります。
歯の表面に汚れがついていたとしても、舌苔は少なく、口臭も起きていなかった——それは偶然ではなく、これまでに重ねてきた治療とケアの蓄積による「予防の効果」です。
当院に通わず、初期治療も行わず、ずっと放置されていたとしたら、着色の奥に虫歯や歯周病の進行があったかもしれません。
また、歯周病の原因菌となる悪玉菌が多いと虫歯菌が生息できなくなる性質があるのも事実です。
虫歯がないことは実は安心材料ではないのかもしれません。
メンテナンスの意味は、ただ
“今ある汚れを取る”こと
ではありません。
菌のバランスや炎症リスクをコントロールし、“悪くならないように守る”ために行うものです。
歯磨きの方法や力加減ひとつとっても、自己流では気づけないことがあります。
だからこそ、専門家による定期的なサポートが必要です。
「気づいたら、前より歯が汚れている」「口臭が気になるようになった」
そんな小さな変化にこそ、早く気づいて行動することが、将来の自分を守ることに繋がります。
口臭や歯周病が気になる方、以前よりも歯に色が付きやすくなったと感じる方、
今からでも遅くはありません。予防は“気づいたとき”が最も効果的なタイミングです。
ぜひ一度、精密な検査とカウンセリングを受けてみてください。
当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。
※自動音声でのご案内となります
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