iOS(Intraoral Scanner、口腔内スキャナー)を使用して制作される歯科技工物は、多くの利点がある一方で、特定の技術的課題に直面しています。ここでは、それらの課題について具体的に解説します。
1. データ互換性と処理能力の課題
ソフトウェアとハードウェアの互換性
口腔内スキャナーから得られたスキャンデータは、CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアを介して処理されます。このソフトウェアは、しばしば特定のハードウェア設定やオペレーティングシステムで最適に動作するよう設計されています。異なる技工所が異なるCADソフトウェアやコンピュータシステムを使用している場合、スキャンデータの互換性問題が生じる可能性があります。これにより、データの正確な解釈や必要な修正が困難になることがあります。
情報処理能力
高解像度のスキャンデータを扱うには相応の計算能力が必要です。技工所のコンピュータが最新の仕様でない場合、データの処理速度が遅くなったり、精度が低下したりすることがあります。これにより、最終的な技工物の品質に影響が出ることもあります。
2. 技術力の要求
技術力の均一性
従来のシリコン印象を用いた方法では、支台歯形成を行う歯科医師、印象材を扱う技術者、模型を作成する技術者、そして最終的な技工物を製作する技工士の熟練度が全て揃って初めて、高精度な技工物が完成します。各段階での専門技術が総合的に影響します。
デジタルスキャンの精密性
一方で、口腔内スキャナーを使用した場合、特にインレーやクラウンのマージン(境界部分)の精密性が重要です。現在の技術では、このマージン部分のデジタルキャプチャにおいて、まだ物理的な印象材による方法に比べて精度が劣る場合があります。これは、スキャナーの解像度やスキャン時の手技に依存します。
熟練した歯科医師が手がけた支台歯形成と印象際得(型取り)において、最も最上位メニューにデジタルスキャンはまだ設定品というのが現実です。
歯科医療は繊細なので仕方がありません。
それでもデジタル印象が最高品質だという説の先生は、おそらく印象をスタッフ任せにしているか、あまり得意でないかのいずれかに当てはまるのではないでしょうか?
3. 解決策と今後の展望
技術の進化に伴い、ソフトウェアのアップデートや新型スキャナーの開発が進んでいます。これにより、互換性の問題や処理能力の問題が解決されつつあります。また、歯科医師や技工士のトレーニングを強化することで、デジタルスキャンデータの解釈と処理技術が向上し、より高精度な技工物の製作が可能になるでしょう。
口腔内スキャナーを用いた歯科技工物の製作は、依然として多くの可能性を秘めており、これらの課題が克服されれば、より迅速かつ正確で患者さんにとって快適な治療が実現します。今後も技術の進歩と共に、その精度と効率はさらに改善されることが期待されます。
今後の展望
デジタル歯科技術の進歩は、口腔内スキャナーを含む様々なデバイスの性能向上につながっています。今後も技術革新により、スキャンデータの精度はさらに向上し、より短時間で高品質な技工物の製作が可能になるでしょう。デジタル歯科医療の未来は明るく、その可能性は広がり続けています。
また、そのすべてがデジタルにとって変わることもないとも感じています。
適材適所に手技手法を選択してゆく判断基準と技術力、そして最も大切なこと、それは患者さん自身の協力です。
全ての良好な結果は、患者さん自身の協力がないと成し得ないものという事実は、どのようなテクノロジーの進化があったとしても普遍ではないかと思います。
デンタルサロンナチュール銀座は、口内環境に改善の余地がある全ての方へ、口腔衛生指導は欠かしません。